My Friend's Tarot

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ゲームの終わり〔6〕

【登場人物】
主人公・希美子(奔放で無邪気なOL)
カノエ(シッカリ者のIT事業経営者)
イッサ(俳優養成所に通う茶髪で軽快な青年) 
ケイ(実家は建設会社を営む無口で黒髪の青年、建設作業員)

希美子は希美子で、イッサと迎えた朝に悟った気持ちを忘れられなかった。家路に着く途中も、気づくとそのことを考えている。それは「何かが違う」という感覚だった。


それはイッサとは、朝を迎える関係ではないという感覚。幸せを感じたはずの直後に、夢のように冷めていく気持ち・・・。遊びと言われても仕方がない。そう感じていた。イッサに申し訳なく思った。なんだかんだと用事を理由にイッサを拒絶していることは、イッサにも分かっていた。ただ理由がわからなかっただけだ。
 希美子はふと思った。ケイが言ったこと。
「俺だけのものになるの?俺を選んだの?」
ケイのいうように考えれば、単純に『あなただけのものになるわという決断ができ、この人を少なくとも選らんだというつもりでいる。それを確認の上で進展する。』そういう事なら、流されてないと言えるのか・・・。今までの自分は、進展してから考えていた。いや、考える必要はなかった。気持ちが大切だったのだ。ケイに言わせれば、それが流されているということだったのでは?そう思った。
 ケイに電話しよう。希美子は躊躇なく携帯を取り出し、ケイに電話をかけた。もう数十メートルで自宅に戻れる、そんな所で立ち止まってケイの出るのを待った。アパートに戻っていたケイは、希美子からの着信通知をみて、少し迷ったが出ることにした。
「ケイ?希美子。今、大丈夫?」
希美子が聞いてくる。まるで何もなかったかのようだ。ケイは
「なに?」
と軽く言った。
「ケイ。私、ケイの言葉でとても大きな発見をしたの。是非、ケイに聞いて欲しいの。」
希美子の声は高ぶっていた。何を発見したというのだろう・・・。ケイは思ったが
「イッサは?」
と口をついていた。
「イッサとは上手くいってるのか。」
優しく尋ねた。希美子は
「そのことも、関係のある話しなの。ケイ、デッキまで出てきてよ。」
希美子は言ったが、
「疲れてるんだ。もう眠ろうと思う。また今度、聞くよ。」
ケイは距離を置いている。希美子は
「わかった。」
と素直にいって携帯をバッグにしまった。そして歩き出した。
 ケイは、ホッとした。そしてTVでも見ようか・・・そんな時に、
「こんばんわ!」

希美子の明るい声がした。その声に驚いたケイ。
「えへへ・・・。無用心ね、ケイ。」
と希美子のテレ笑いが見えた。
「ケイは来てくれないから、話しにきたの。本当に大切なことなんだってば!」
希美子は楽しそうに言った。
「わかった。けど、イッサに内緒にするなよ。このこと。」
ケイが言った。kissのことを黙っているだけでも、気持ちがモヤモヤしていたのだ。その上、イッサから希美子とのことを聞いたすぐ後に秘密をつくりたくはない。
 希美子は、買ってきた缶コーヒーと、ケイにはビールを差し出した。そして
「私、ケイが言った意味がわからなかったの。ケイの言いたいことが・・・。」
希美子の話しにドキリとした。ケイは
「もう、俺のことはいいんだよ。」
そう言ったが、希美子は、続けた。
「そうじゃないの。私、流されるとかって、好きなら当てはまらないと思ってたんだって、今日、気づいたの。気持ちで好きだと思う人との関係なら、何があっても流されるということには当てはまらない!って、そう思ってたの。」
ケイは理解したようにうなづいた。
「私、今まで突っ走ってから本当に好きだったのか、って迷うことばかりだった。何か違うような気がしてしまって・・・。ケイのいうように、少なくとも続くか続かないか、どのくらい続くかは別としても、この人のものになる、この人を選ぶ、って決められる自分を発見してから進めば、私の憂鬱もなくなる気がするの。ケイ、違う?」
希美子は尋ねた。
 それまで黙って聞いていたケイが口を開いた。
「俺は、お互いにそういう確認があった方が良いと思うだけだ。」
控えめに言った。
「でも、私にとってはすごい発見なの!」
嬉しそうに希美子がいう。ケイは、さとすように話した。
「イッサも心配してたぞ。返事はしたのか。」
希美子は
「返事をしなきゃって思う。」
そうハッキリと言った。ケイは、いよいよ落ち付くのだなと感じた。自分も新しい環境に移るつもりでいる。丁度、良いと思った。希美子は続けて
「イッサへの気持ちが嘘だったとは言いたくないし、思わない。でも、イッサと暮らすことはできないの。ケイの言い方でいえば、私はイッサと流されてしまったことになるの。ごめんなさい、ケイ。」
希美子は涙ぐんだ。
「ケイの忠告がもっと早くわかっていたら、こんなことにはならなかったのに・・・。私、イッサもケイも傷つけたんだね。」
ケイは、なんて言ったら良いのか分からなかったが、
「イッサも俺も男だ。お前が気にするな。」
ケイは、やっとそれだけ言った。

イッサは芝居に没頭していた。そしてケイもカノエも希美子も仕事に邁進していた。それぞれが何かを掴もうとするように、懸命に働いていた。

「イッサ、どうだ元気か?カノエとはその後どうだ。」
広瀬がイッサに声をかけた。
「先輩、カノエさん本当にそんな人じゃないっすよ。」
イッサは答えた。今度は突っ込んで聞いた。
「俺、わかりません。カノエさんは、しっかりして責任感の強い人だと思うんです。」
イッサが言うと、広瀬は
「確かに芝居に関しても責任感は人1倍あったと思うが、男に関しては別だろ。お前なんて朝飯前だよ。何食わぬ顔で捨てられるだけだぞ。近づきすぎるなという忠告だよ。」
確信をもって言う広瀬。イッサは問うた。
「先輩、それ間違いじゃないっすか。」
イッサには別人の話しだった。
 イッサは、あれからカノエとも連絡をとっていないし、希美子にも連絡しづらくなっている。希美子のことでは、彼女を問い詰めるまでもないとイッサは思っているし、あの後、連絡をよこさないどころか、避けているのが彼女の返事なのだ。野暮な奴にはなりたくない。希美子の恋を見てきたが、やはり希美子を独占できるのは自分ではなかったのだ。その上、カノエにまで嫌な思いをさせることになり、二人とはこのままになってしまうのかと、悔いるような思いもよぎるのである。しかし、いつも気づくと深夜だ。カノエに連絡のしようもない。広瀬の酒癖の悪さを知らなかったイッサは、情けなくもあり、まさか故意に言ったことなどとは夢にも思っていなかった。
 ただ、カノエの電話の声が、妙に気になって離れない。泣いていたのを悟られまいとしているようだった。しかし、彼女が店を出て行ったときも、怒りはあれど悲しむ様子はなかったし、いつも心外なことには、ピシャリと返すことができる頼もしいカノエさんだ。彼女に限って、あんな事くらいではと思うのだが・・・。しかし日がたつにつれ、希美子のことといい、何もかも聞けなくなってしまう。何を考えていいのか、どういう考えをすべきなのか、二人はイッサにとって、大切な関係であったことに違いなかった。

 カノエには、このところ心労が重なっている。次々とカノエのいるIT分野にも、大きな資本の会社が参入してきて、このまま競争に勝ちぬくのは容易ではないことが分かってきたのだ。その中で業績をあげて行くには、相応の向学心や根性が必要である。カノエがこの分野で暮らして行こうと思ったのは、どんな環境の人を愛したとしても、自分の環境を変えられる魅力だったが、先行きは常に見えないも同然。カノエの運営している数々の女性対象のマーケットは、そこそこに賑わいを見せてはいるが、このまま永久に良き変化と開発をしていくには途方も無い努力が必要だろう。
 そもそもカノエは最後の恋のためにすべてを頑張ってきたのだが、広瀬との件が全ての終わりに思えていた。何も変わらないのだとしたら自分は何のために頑張るのか・・・意味などない。果てしなくマイナス思考に傾き、意欲は急激に失われていた。
 気持ちは一気に、仕事を整理したいという方へ傾いていった。今は、もうそれしか考えられない。自分は仕事にも負けたのだ。そう思った。今のカノエは、抜け殻のようだ。
 希美子はどうしているだろう。イッサと暮らす事に決めたのか?希美子には幸せになってもらいたい。カノエは心から思っていた。無邪気な少女のままの気持ちを持ち続ける希美子。自分の失ったものをすべて保ち続けている希美子。カノエは希美子の輝きが、嫉妬を超えるほど美しく思えた。
 カノエは久しぶりに自分から連絡をとって希美子に連絡した。希美子は、イッサへの気持ちを話した。カノエは希美子の気持ちが分かるような気がした。だから、
「希美子が悪いのじゃないよ。違ったんだもの・・・。」
そう慰めたが、今までの希美子と何か違う感じがした。希美子は、答えを求めてじっくり考えた行動をとることよりも、答えを求めてどこまでも突っ走るタイプで、何よりも素直で可愛いかった。しかし、その日の希美子が話した気持ちは、大人の女性として成長しようとしているかのようだった。カノエは希美子が本当の愛をつかめる日も近いと感じた。イッサの気持ちを察すると残念ではあるが、これが希美子の結論であり、正直な気持ちなのだ。
 そしてカノエも自分のことを切出した。
「希美子、私しばらく休業しようと思う。田舎にかえるわ。ちょっと疲れた。仕事は電話線さえあればできること沢山あるし・・・。」
希美子は突然のことに驚いたが、カノエは詳しいことには答えなかった。希美子には、カノエの周囲で起きていることのほとんどを知ることがなかったのだ。カノエに何かが起こっていることは分かったが、話せる時が来るまでは・・・というカノエの言葉を聞き、待とうと思う希美子だった。軽率なことは決してしないカノエのことを信じた。信じようと思った。
「カノエのことだから、よくよく考えてのことだろうと思うけど、絶対に連絡ちょーだいね!」
それだけは念をおした。カノエは、
「大げさなんだから~。携帯は今迄どおりだよ。」
そう言って明るく笑った。
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