My Friend's Tarot

趣味や興味のあるもの・近況をリラックスして書きます

ゲームの終わり〔終〕

 今日で何度目になるであろうか。カノエに会いに何度となく足を運ぶイッサがいた。会うといっても近辺の観光スポットをドライブしたり食事をするという、何の変哲もないものだ。それでもカノエに会いたい一心で、わずかな時間を惜しんで車をとばす。そんなデートだった。


 そんな状況が心配で断ろうとするのだが、イッサは一途に車をとばしてくるのだった。そして別れの時間がくる度に、このまま自分と帰ってほしいと頼むのだが、カノエはどうしても、うん、と言えなかった。
 イッサはある日、そのままカノエを東京に連れ帰ろうとしたことがある。どうしてもカノエを東京へ連れ帰りたかったからだ。カノエの家への林道に入らず、そのまま135号線を突っ切った。するとカノエは、イッサの真っ直ぐに前だけを見据える様子に驚き、何度も何度も送ってほしいと頼んだ。自分は本当に体の調子が悪いから、楽になったら必ず貴方の元に行くからと、泣きだしそうに訴えた。イッサもそんなカノエの必死な訴えに涙をのむしかなく、それからは、自分の気持ちを抑えながら過ごしている。
 カノエは、戸口で別れる時の、イッサの寂しい笑顔が辛かったが、イッサのお荷物になることが目に見えている今は帰れっこない。高い壁を超えられずにいた。
 希美子は、その夜の悲しい別れをカノエから聞き、イッサと暮らす不安があるのは本当だが、一種の心の病ではと思いはじめたほどだ。自分は心配しているつもりでも、少し楽観的ではなかったかと反省もした。カノエの疲れは自分からすれば、想像を超えたものではないかと感じ、そして初めて、ケイの話していた心配を理解したのだ。カノエは今まで、希美子が感じたこともないほどの疲れとストレスの中で生きていたのだと・・・。カノエの切り開いてきた環境は、ある種の極限状態だったのかもしれない。その中で、自分やイッサの相談に乗り、元気づけてくれていたカノエ。希美子は、何がなんでもカノエに安らぎが必要なのだと思った。そして、それにはイッサが必要なのだ。カノエが踏ん張ってきた目標であった、最後の恋のお相手であるイッサが。そう確信した。

 ある時、
「智恵子抄って知ってる?」
 イッサが車を走らせながら聞いた。
「知ってるわよ。昔、好きで持ってたな。」
 カノエが答えた。
「今度、公演するんだよ。カノエに似てるような気がする。」
 そうイッサが言うと、カノエは元気な笑顔を浮かべて、
「私は智恵子のように繊細じゃないわよ。強いんだから・・・。」
 と言った。イッサは、
「智恵子は病にかかってしまったけど、か弱いだけの人じゃなかったはずだよ。女流画家で、当時の慣習に反して自分の人生を自分で選択した新しい女性だったんだ。結婚後は彼の芸術活動に支障がないようにと光太郎を愛して、随分と気を使ったらしいよ。」
 カノエは、イッサの話しを楽に、そして関心をもって聞いた。カノエもイッサといることが次第に心地よくなっていた。
 カノエはその夜、素直な気持ちでパソコンに向かっていた。イッサへの今の気持ちを思いのまま、メールに向かって書いている。

『イッサ、いつも会いに来てくれてありがとう。私も少し元気になってきた。イッサに会えるのが私の楽しみになってきて、そしてメールチェックだって、今まで仕事でしたいた自分とは違う自分を見つけているの。イッサが私の未来を変えてくれるのかも知れない。そう感じるこの頃です。』

 カノエは、落ち着いた気持ちで過ごすようになっている。イッサを思えば、別ればかりを考えていた自分が、変わっているのがわかる。最近は、気持ちがとても楽なのだ。それもこれも、すべてイッサの一途な気持ちがそうさせていた。
 そのとき、希美子からメールが届いた。
『私達は結婚することになりました。嬉しい報告でーーす!』
 と書かれている。続いて・・・
『私達の婚約のお祝いもかねて、
 ケイの家の熱海の別荘で10月20日花火大会を楽しみます。
 カノエの所から熱海は近いでしょ?
 熱海の駅前でみんなで待ち合わせましょう。
 イッサも来るよ!ハート

 希美子らしいメールである。カノエは希美子のメールを読んだ直後、イッサ宛メールに、ある言葉を付け加えた。
『今の私は無力なの。今の私には何もできない。それでも貴方のもとで暮らして良いですか。もしイッサの気持ちが変わってなければ、希美子達を囲んだ花火大会の後、そのまま私をさらってください。』と。

 イッサの携帯に送った直後、カノエの携帯電話が鳴った。イッサはカノエがでるなり興奮した様子で、
「カノエは俺とは成り行きだったんじゃないかって・・・、俺、そう思うと恐かった。でも信じたかったんだ。話しをするときのカノエの嬉しそうなしぐさや笑顔を・・・。今すぐに迎えにいくよ!今すぐに行くから待ってて。」
 そう嬉しそうに言った。カノエは、涙声で
「うん。でも、気をつけてきてね。急がないで来てね。」
 そう答えた。花火大会を待つことなく、カノエは東京に戻った。
 田舎から戻ってきたカノエは、イッサといっしょに暮らしはじめ、イッサは若手の看板にもなりつつあった。カノエは自分の夢だったものの近くにいるイッサといることで、自分も癒やされるのを感じた。イッサも理解ある応援をしてくれるカノエを心から愛した。広瀬はカノエの話しをイッサから聞き、後日カノエに謝ったが、カノエは笑顔で応えた。広瀬のことがなければ、自分はまだ10年も20年も最後の恋を探し続けていたかもしれなかったからだ。
 そして希美子は、祝福され婚約へと進んだ。熱海の花火大会では、幸せを捜し求めた二人の女性が心から幸せな笑顔で、愛する人と同席していた。見つめあう二組のカップルのうえに、盛大に花火は打ち上げられた。まるで披露宴のように・・・。
 ケイを心から信頼し、あの不安定だった希美子は遠い過去になった。堅実な殻に自分を閉じ込めていたカノエと、行動してから後悔を重ねた希美子。希美子を見つめ続けたケイと、本当に愛しい人は側にいた強靭だと思っていた女性だったイッサ。
 結局、カノエは自分の課した罪を解くことで最後の恋をつかむ事になったのだ。誰も受けつけないことから、自分を許すことで。
 そして希美子は、探し続けることではなく、先に考えるということを知って本当の愛をつかんだ。どんな女性も、自分に何かを目覚めさせるだけで愛をつかめるのだ。それが二人の永遠の口癖になった。

END
【後記】ゲームの終りを最後までご覧いただき、本当にありがとうございました。これは随分と前に、殴り書きをしたような物語なもので、しかも再読したとて更正する技能もないわけで(^_^;)。つたない文章で申し訳なかったのですが(^^)、もし感想でも頂けたらうれしいです~。また、代わりにクリックしてくださってもOK.数字としてこちらに声が届きます。

■関連する記事かも

 - ゲームの終わり(物語)

Translate (翻訳) »